僕の唄君の声
「大丈夫か?」
「…っ!」
急に聞こえた頭上からの声に思わず顔をあげる。そこには、ピアスや態度には似合わないような心配したような顔があった。
「え、うん?」
「ははっ疑問形かよ」
「…」
無言で頭をポンポンとされた。
そこで気付いた。
何に?
自分の体勢に!!
榊下の腕が腰に回され、顔は結構な至近距離。ついでに頭も撫でられていて。
「………っ!あ、の「玲!てめぇいつまで遊んでんだよ」
「あ、やべ。じゃ!」
「は、?」
急に手を離されよろけたが、体勢を立て直し去って行く榊下の背中を見る。
「平凡には程遠い人種だな、あの人。」
慌ただしくボールを追い掛ける榊下を見ながら呟く。
ああいうのは関わらないのが1番だ。
華己のように恋愛する刺激も、榊下のように女子に注目される刺激も、この甘ったるい声の持ち主のように無謀なことをする刺激も、私はいらないのだから。
ただ平凡が欲しいだけ。
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