僕の唄君の声
しかしネクタイを持たれているため体勢を変えられずに視線を泳がせているとニヤニヤ顔の榊下と目が合った。
「な、何…」
なんとも言えないニヤニヤ顔に若干ヒキつつもそのニヤニヤの根源を聞けば、榊下は自分の心臓あたりをトントンと指差した。
「何、心臓でも痛いの」
「違ェよ。お前の、だよ」
「別に痛くなんか…。…!」
「お、気付いた?」
バッと勢い良く自分の心臓あたりを手で抑えれば、あれま残念とか言って榊下は私から視線を外した。
最悪最悪最悪最悪!
榊下が指差したところに視線を落とせば、ネクタイを緩くしてYシャツのボタンを2つ開けてセーターを着たいつもの自分の制服姿。しかし前屈みになった私の体勢は榊下にすればオイシイ眺めとなったらしい。
「意外とあるんだなー。着痩せタイプ?」
「――……っ!」
「顔真っ赤ー」
「な…っ!」
私がさっき指摘したことで榊下の何かのスイッチを押してしまったらしい。これが本性なのかは知ったこっちゃないがさすがに悪質だろうと、いくら男に興味がない私でも思う。
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