僕の唄君の声
「何なの、アンタ」
「別に?お前が上辺の俺に気付いたから本性出してるだけだぜ?」
「かなり迷惑。」
「つれねェなー」
「つられる気ないし」
「威勢がいーね」
「興味ないだけ」
「へェ…。これでも?」
「は?何する…、の…」
近い近い近い近い近い近い近い!
だんだんと近付いてくる榊下の完璧な顔に言葉を失いつつもこの後の展開を予想する。
そしてその予想とともに引き出しの奥にしまい込んだ記憶も頭の中を駆け巡る―…。
「……っ!…ごめ……な、さ」
瞬時に喉はカラカラになり声すらまともに出なかった。押し退けたいが頭がパニックになった私の身体は言うことを聞かなかった。
すぐ目の前に着た榊下の瞳を見れば目を見開いた自分の顔。涙も声もろくに出ないだけに私から見てもただ榊下に迫られびっくりしている様にしか見えない。
「(た、すけ……て…)」
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