僕の唄君の声
(華己視線)


「…良かっ、たあ」


奏輔くんと玲くんの抜群の反射神経に助けられ、自分のことにも壱葉のことにもホッと息をつく。


「華己ちゃん、大丈夫?自分で立てる?」

「え…?」


最初は何を言っているんだろうと思ったが、よくよく自分の体勢を見てみると奏輔くんの背中に手を伸ばして思い切り抱き着いていたのだ。


「…っ!だ、大丈…あれ?」


奏輔くんから手を離し、自分で立とうとすればガクンと膝が曲がった。コケそうになったが奏輔くんが慌てて支えてくれたのでなんとか持ちこたえた。


「ありがと…」

「いーえ」

「…あ!壱葉は?」

「お前らがイチャコラしてる間に気ィ失った。気絶する前かなり暴れてビビったけど。」

「え、あぁごめん!」



恥ずかしいところを指摘されて少しびっくりしたけど一応謝ってみた。そのあとにそっけなかったが別にいいと言われ安心する。安心していると玲くんは壱葉を抱っこして私たちに背を向けた。

何処に行くのか尋ねれば保健室に決まってんだろと返事をもらった。

後を追おうとしたが足に力が入らず、奏輔くんにも止められ為す術はなくただ玲くんの背中を見守った。




玲くんの姿が見えなくなったのと同時に奏輔くんが口を開いた。

「あれで気付いてないんだもんなー」

「…え?」

「何でもないよ?」


聞き返せば話を反らされ、奏輔くんはその言葉の意味を教えてはくれなかった―…。



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