僕の唄君の声
『玲が悪いんじゃない』
確かに私はそう言った。そしてそれは紛れも無い真実だ。
「…どういう意味だ」
「…そのままの意味」
きっと言い方が引っ掛かったのだろう。
玲はその意味を詳しく聞いてきた。まあ深い意味もなくある意味その言葉通りの意味なのだからこう言うのも仕方ない。
「そこまで言って何でもありませんじゃ通らねェからな?」
「ははっ。やっぱり?」
少し冗談混じりにした会話でだんだんと硬直した脳や身体もじわりじわりと解れた。
そして暫くの間。
息を吸う音とともに玲が口を開いた。
「誰かに話聞いて欲しいんじゃねェの?」
驚いた―――……。
たった数時間しか一緒に居なかった人が今まで私が我慢して我慢して我慢して飲み込んだ言葉と気持ちに気付いてしまったのだから。
「…ま、俺が聞きてェだけなんだけどな」
そしてこんなにも素直に私の過去を知りたいと言う。今までの雰囲気からして大分重い過去だというのは分かるだろう。それなのに、聞きたいという。
――――――…私の過去。
「聞いて、欲しかった…。」
私は頭の中の引き出しを開ける。
「私の記憶が私を殺しちゃうから…」
――私の、ために…。
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