僕の唄君の声


暴力が止み、お父さんはいつものように煙草を吸っていた。フーと息を吐く度に出る白い煙で煙る部屋がまるで私の頭の中のようだった。それを横目に、僅かに背中がゾクリとしたのを無視して風呂場に急いだ。


シャワーで軽く身体を流し、痛む身体を気にしながら湯舟に入り力を抜く。私が私でいることを許される時間だ。殴られるための人形じゃない時間。


全てを済ませ体にバスタオルを巻いて風呂場から出た瞬間、目が落ちるのではないかと言うくらいに目を見開いた。

『……な、』

『いい体してるねェ…?』

ニヤニヤしながらお父さんが脱衣所に居た。


その手には、





――――……ガムテープ。




ガンッ

『…っガ!』


思い切り壁に頭をぶつけられ、目がチカチカとして立ち上がれなかった。足と腕には力が入らなくて視界は霞み周りを認識出来なかった。頼りになるのは耳だけで、多少キーンという耳鳴りはしたものの音ははっきりと聞こえていた。


バリバリとガムテープを剥がす音ともに近付いてくる足音。


ヒヤリと手首に冷たいものがあたり、両手首を後ろに一つに纏められた。


さっきのニヤニヤした顔

自分の格好

今の状況



嫌でも気付いた。お父さんがこれから何をしようとしてるのか。





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