僕の唄君の声


……これ以上の、こと?


ふと今の自分の体勢を気にする。


さっき腕を引っ張られたときは、抵抗するのが面倒くさくて玲の方へそのまま引き寄せられた。それで、女子が叫んじゃったわけよ。


…で、問題はこのあと。



「この手は何かしら、榊下君?」


「何って、別に?」



別に、じゃないでしょ。
変でしょ、この手の位置は。



「何で腰に腕なんか回してくれちゃってるわけ。説明プリーズ。」



そうなのだ。この男ときたら、人の気も知らずに、腕を掴んでいた手をいつの間にか腰に移動させていた。



「マジ離せよ、黒髪のっぽ(ボソリ)」


「…ん?よく聞こえなかった。」



小さい声で呟いた声はバッチリ聞こえたらしく、ニッコリと不自然な笑みを顔に浮かばせながら、玲は私の頭を拳でグリグリしてきた。



「痛゙い痛゙い痛゙い!」


「そりゃそうだろ。痛くしてんだから。」


あっけらかんと答える玲に若干イラッときたものの、これ以上刺激を与えるのは避けた方が良さそうなので無言で腕を退かそうとしてみた。



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