僕の唄君の声


……なのに、


「なんっでびくともしないの!」


全く動かない。上に持ち上げようとしても動かない、右にも左にも動かない。


人がこんなにも頑張って頭の上の拳を退けようとしてるのに、玲は鼻歌なんか歌ってる。

「ゔ〜っ!」


「〜〜♪♪」


「っこの!」


「〜♪、♪」



――…何で動かないの!



「あれ、何しとんの?」


後ろから聞こえた声に振り向けば、私の頭に拳から腕を置き換えた玲も一緒に振り向いた。そこには、日誌を持った奏輔と手ぶらの華己がいた。


「見てたでしょ!」


「2人で日誌取りに行ってたのよ。で、何やってんの?」


「コイツが、…っ!」


「…コイツ?」



やばいと気付いたときには時既に遅し。
玲はドスッと腕を私の頭から肩に落とし、ユラリと私の顔を覗き込んだ。



「あーらら。玲のドS心に火ィついちゃった。」





奏輔の声が聞こえたのと同時に、


私の視界は真っ暗になった。




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