僕の唄君の声
(玲視線)


ネタがきれたのか、奏輔は達者に動かしていた口をいつの間にやら閉じていた。すると、隣でカサリと微妙に動いた気配を感じ、そこを見れば壱葉が掠れた声で何か言葉を発した。


「なんで、そんな噂が…」


「簡単だよ〜!壱葉ちゃん、すっげェ綺麗だもん!」


「…は?」


「あれ、気付いてないの?」


「あー、駄目駄目。壱葉ったら私がいくら綺麗だよって言っても認めないもん。」



突如現れた千種に驚きつつ、壱葉をもう一度見てみる。


確かに、顔は文句なしに整っている。
それに、多分165cmとかその位だろうと思われる長身の体。イヤラシイかもしれないが、出るところは出てるし細いところは細い。



「壱葉ちゃん、クールビューティで結構名前通ってるよー?」



そう言いながら、奏輔は壱葉の肩に腕を回した。

ドクン―…


「…っ!」


その直後、壱葉は肩をビクリと震わせ、カタカタと小さく震え出した。


「、壱葉?」


その様子が気になり声を掛ければ、出会ったばかりの頃のような男に恐怖心がある表情をしていた。


「…奏輔、離せ。」


「…は?」


「腕、退けろ。」


「何でだよ?」


「いいから…っ!」



怒鳴ったような声は、意外にも掠れたような息だけの声だった。



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