僕の唄君の声
「…‥じゃあな」
「え?あ、うん。ばいばい」
いつもの癖で無意識に手を振る。
問題はそのあと。
薄い二重の鋭い目、薄い唇、筋の通った鼻、長すぎない黒髪。
さっきからずっと無表情なこの人が、手を振ったくらいで笑うなんて思いもしなかった。
「玲〜?」
「…!呼んでるけど。」
「あぁ、後でな」
そう言って榊下くんは去っていった。
「後でな」って言ってたけど何の事だろう。
カサ
「何これ」
机に置いた腕の下から紙の擦れる音がして、見てみると紙切れがあった。
手に取ってよく見ると、そこには文字が書いてあった。
「『アンタも部活見に来て』だって!すごいね、壱葉!学校1のモテ男くんにそんなこと言われるなんて!でも壱葉なら有り得るよね。だって超綺麗だもん!」
「…行かないよ。」
マシンガントークを始めた華己を横目に授業の支度をしながら、否定の言葉を吐き出す。
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