僕の唄君の声
「玲ー。」
「あぁ、奏…」
後ろに目線をやれば、お馴染みの奏輔がスポーツドリンクを飲みながらこちらにユッタリノッタリと歩きながら向かってきた。
「お、珍しいね。俺のこと奏って呼ぶの。どうした?」
「別にな「なんでもねェは無しだからな?」
そう言って、言葉を重ねてきた奏輔に感心の言葉をあげた。
「さすが。」
「奏って呼ぶときは大体なんかあんだよ、玲は。で?どした?」
「あー、やっぱ後で。」
「…そ。あ!華己ちゃんのとこ行ってくるわ!」
「おう。」
そう言いながらパタパタと足音を残しながら走り去る奏輔の背中を見つめる。
『好きなんじゃねェの?』
「好き、か…。」
「部長ー!なんか呼んでますよー」
ふと物思いにひたれば、扉近くにいる後輩に声を掛けられ、そっちに目を向ける。
そこには頬を染めた女とソレを指差しながら手を振る後輩がいた。
「はあ。……今行く!」
日常に戻りつつも、思い出すのはお前のさっきのホッとしたような儚い笑顔。
お前も、日常になっちまうのか?
……それだけは嫌なんだ。
お前には、『慣れ』たくない。
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