僕の唄君の声
2
(玲視線)
奏輔に帰れと言われ、それに従い、着替えるために部室へと向かう。
頭の中を支配するのは、さっきの女の言葉。
自分の気持ちに素直に。
相手の思いに敏感に。
ガタンッ
少し古い部室のロッカーを開け、着ていたものを脱ぐ。(途中、カメラのシャッター音が聞こえたので、開けていた窓は閉めた。)
着替えも帰り支度も終えたので、部室の扉を閉め、校門へ向かう。
体育館の裏を通ると近道なので、そっちを通ろうとすれば、無意識に視界に入った非常口。東階段に繋がるところだった気がする。
東階段、と言えば壱葉だ。
「(‥居る、か?)いやいやいや、居ないだろ。」
とか言いながら、非常口の扉を開ける俺を笑わないでほしい。
さっきの泣き顔が忘れられない。
なんで泣いていたのか、
なんですぐに居なくなったのか、
タン‥タン‥
スニーカーのまま階段を上がり、夕日に目を細める。消えてしまいそうだけど、力強い光は、何故か壱葉と被った。
しばらくすると、踊り場に人影が見えた。
タン‥、
居た。
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