僕の唄君の声


(玲視線)


奏輔に帰れと言われ、それに従い、着替えるために部室へと向かう。


頭の中を支配するのは、さっきの女の言葉。


自分の気持ちに素直に。
相手の思いに敏感に。



ガタンッ
少し古い部室のロッカーを開け、着ていたものを脱ぐ。(途中、カメラのシャッター音が聞こえたので、開けていた窓は閉めた。)


着替えも帰り支度も終えたので、部室の扉を閉め、校門へ向かう。


体育館の裏を通ると近道なので、そっちを通ろうとすれば、無意識に視界に入った非常口。東階段に繋がるところだった気がする。


東階段、と言えば壱葉だ。


「(‥居る、か?)いやいやいや、居ないだろ。」


とか言いながら、非常口の扉を開ける俺を笑わないでほしい。



さっきの泣き顔が忘れられない。

なんで泣いていたのか、
なんですぐに居なくなったのか、



タン‥タン‥

スニーカーのまま階段を上がり、夕日に目を細める。消えてしまいそうだけど、力強い光は、何故か壱葉と被った。





しばらくすると、踊り場に人影が見えた。



タン‥、



居た。




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