恋色想い



「颯…」

私の方を見てほしくて、私は必死に颯の名前を呼ぶ。





颯は哀しい目で私を見た。
そして、哀しい顔をして笑ったんだ…。





「碧衣…。」

そっと私の顔を撫でる颯。
…それがなんだか別れの合図みたいに思えて、私はぎゅっと颯の手を掴んだ。





「隣の子は、彼女さん?」



長いまつげがはえそろった大きな目をそっと閉じてから、釉梨さんは微笑みながら首をかしげる。






「…あぁ。」

少しの間の後、ゆっくりと颯が答えた。





「そう…。そうなの…。」

悲しそうに視線を落として、釉梨さんは呟く。





< 134 / 230 >

この作品をシェア

pagetop