恋色想い
「…颯から、私のことは聞いてる…よね?」
カチャリとカップを置いて、釉梨さんは私を見た。
「えと…はい。」
どう答えていいのか分からなくて、私は頷くしかできない。
「…そう。なら話が早いわ。私、颯を傷付けてしまったの。」
すこし涙ぐみながら、釉梨さんが言う。
「でも…釉梨さんは何も悪くないんじゃ…」
どうして釉梨さんの肩を持つ発言をしてしまったのか分からない。
だけど、私はそう言った。
「私がもっと強かったら…きっと、こんなことにはならなかったと思うから…。」
寂しそうに笑う釉梨さんの笑顔に、胸が痛む。
「私、アメリカでの手術、成功したの。でね、ここに帰ってきたんだけど…。」
「そこに、私と颯がいた…」
私が口を開くと、一瞬びっくりした顔になってから、釉梨さんは笑った。
「そう。だけど…颯には私は必要なさそうね。」
「え…?」
「だって、あなたがいるもの。」
釉梨さんは寂しそうに微笑みながら、そう言った。