恋色想い




「あ、たこ焼き。俺、たこ焼き好きなんだよね。」


隣にいる小学生の男の子に負けないくらい、目をキラキラさせてたこ焼きの屋台を見る颯。
こういうところ、日頃は想像できないくらいに子供っぽくてかわいいと思う。



…口が裂けても颯には言えないけど。






「綿飴だぁ〜!」


「碧衣、好きなんだ?」


「うん。昔、綿飴は雲からできてるって勘違いしてたっけ。だから、空に浮かぶ雲も甘くてふわふわしてるって思ってた。」




私が言うと、颯はアハハと笑いながら頷く。

「碧衣なら有り得るな。かなりメルヘンだな。」




「そんな笑わなくてもいいじゃんか〜!」


私も精一杯笑った。





…『最後』の私は、笑顔の私がいいから。





決心したんだ…。
私から、颯の手を離そうって。



きっと…
颯は優しいから、自分から私の手を離したりしないから。



たとえ自分の気持ちを犠牲にしても、私といることを選ぶはずだから。






だから…
私から、別れを告げよう──…










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