恋色想い








「颯、別れよう──…」





「あ、おい…?」





滲む花火と颯の顔。
頬を伝う雫。


この瞬間さえ愛しくて…
手放したくなくて。





だけど…
夢の時間はもう終わり。
別れを告げるときがきた。






「っなんで…っ!」

哀しげに歪む颯の顔。






「…颯には、幸せでいてほしいから…。」



「…え?」




「私、颯にはいろんな幸せをもらえたから、だから…颯にもほんとに幸せになってほしいから…だから…」





颯にもらったもの。
人を信じる気持ち。
お兄ちゃん。
ほんとの友達。

笑顔。



それから、『好き』って想い。
愛しさとか、切なさとか…
恋して分かる、いろんな想い。



だから…
私はもう大丈夫。





泣いちゃダメ。
決めたんだから。
颯の前では泣かないって。優しい颯は、私が泣かないようにって行動してくれた。
だから、颯には涙は見せない。







「今まで、ホントにホントにありがとう!」




最後の笑顔は、最高の笑顔で映りたい。
もう、一人で歩けるよって伝えたい。






「私はもう、颯がいなくても大丈夫だから…!じゃあ、元気でね!」







「碧衣!!」






颯の声に、振り返ってしまいそうになる。





ありがとう
ありがとう





いくらいっても足りないけど…






どうか
釉梨さんと幸せになって──…















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