恋色想い




「…ごめんな、釉梨。」



次は、真っすぐに。




ここまで俺を愛してくれた人に、ちゃんとまっすぐ伝えたい。




「俺を…、愛してくれてありがとう。だけど…これ以上一緒にいられない。」





「うん…お礼を言うのは私だから。今までありがとう。」





病室での別れから止まっていた時間がゆっくりと流れだす。





今度はお互いに理解しての別れ。
これで、二人とも前に進める。







「じゃあね、颯。」



「あぁ。じゃあな。」







ありがとう、釉梨。

去っていく細い釉梨の背中。

ずっと、この細くてか弱い背中を守っていかなければいけない、そう思っていた。




だけど、釉梨はぜんぶ分かっていたんだ…。







初めて、釉梨の背中をたくましいと思った──…












< 194 / 230 >

この作品をシェア

pagetop