たた・・・君を。
Side 裕樹

学校の帰り道、くみの姿を見つけた。

くみは相変わらず俺を〈翼〉と呼ぶ。

くみとの初対面でくみは

〈裕樹くんっていうんだね。けど、なんか翼って感じする〉

それからというもの、くみは俺を〈翼〉というようになった。

始めは全然、会話なんてしなかったけど、だんだんと会話が増えてきて、俺たちは仲良くなった。

校内でも有名なくみと付き合えた時は、すげー嬉しくて、眠れもしなかった。


「…うき………裕樹!」

「!!っ。なっ何??」

「何ぼーっとしてんだよ。くみこのこと考えてんの??笑」

よく一緒にいる海がからかいと笑いを交えてそう言った。

海は俗に言うチャラ男である。

海は茶色の髪で、前髪が長い、で、目が細く、上につっている。

「っるせ。ちょっと魂抜けてたの」

「なんだよそれ」

海は笑いながらコーラが入ったコップをいじっている。

「くみ…元気だった??」

敦司が言う。

通称アツ。

敦司は甘いマスクで、なんか…良い匂いがする。

野球と体操が趣味で、夏希という彼女がいる。

「うん。元気だよ」

「そっか。ならよかった」

「くみって最近、忙しいの??俺、会いたいんだけど」

チャラ男の海はぶっちゃけくみを狙っているらしい。

「諦めろよ。お前のことなんか相手にしないぜ」

「分かんねーじゃん。俺、ああゆー男に興味がなさそうな子をおとしたいんだよねぇ。俺、嫌でも女のこ寄ってくるし」

それはチャラい女だろ!っと、心の中でつっこんだ。

「お前、まさかマジなの???」

海は特定の〈彼女〉というものをつくったことがない。

「んなわけねーじゃん。ただ、おとしたいだけ。俺がマジになるわけねーじゃん」

「元カレの前でそれを言うなよ」

敦司は苦笑いでいう。

「あっ。付き合ってたんだっけ??2人って」

何の悪気もなさそうに…いや…あんのか?

「そーだよ。お前いっぺん口縫うぞ」

「可愛い顔して言うこと怖いね~」

「も~!うるさい!!」

なんだよ。海…今日機嫌悪くない???



< 10 / 38 >

この作品をシェア

pagetop