タテマエなんて、イラナイ――。
ボールが嫌いな私は、ドッチが当然の如く大嫌いだ。
外野に居て投げても、自分のチームへは到底届かない。
足手まといになるならと、私は内野にいた。
それが、まずかった。
「瑠奈っ、危ないっ!」
その声に前を見ると、ボールが私目掛けて一直線に飛んできていた。
当然の如く、玲音くんが投げたボールが私の顔面に直撃したのだった。
「瑠奈?大丈夫?!」
奈実が心配そうに聞いてくる。
「あいたたた」
「大丈夫?渡瀬(トセ)さん?」
私の側に玲音くんが来る。
因みに渡瀬ってのは私の名字だ。
「先生、俺渡瀬さんを保健室に連れて行きます」
「大丈夫だよっ!」
「もとはといえば、俺が悪いんだし、これぐらいさせて」
「じゃあ雅(ミヤビ)頼むな」
雅っていうのは、玲音くんの名字だ。
玲音くんは先生に返事をすると私を連れて、保健室へ向かった。