タテマエなんて、イラナイ――。


保健室には先生が居なかった。

だから玲音くんが私の手当てをしてくれている。


「ごめんね、さっきは」


玲音くんが謝ってくる。


「ううん、気にしてないから。玲音くんこそごめんね。私のせいで抜けさせちゃって」


「それは元々俺が悪いんだし……渡瀬さんってドッチ嫌い?」


「嫌いっていうか、私スポーツは余り得意じゃないし、今日みたいに足手まといになっちゃうから」


「足手まといなんかじゃないよ。それに人はそれぞれ得意不得意があるんだし……渡瀬さんは頭良いじゃないっ」


「勉強しか取り柄がないから……」


「勉強が出来るだけでも凄いよっ。それに、自分の事そんな風に言うのはいけないと思うよ」


「そうだよね、ごめん……」


「せめてる訳じゃないよ?唯、自分の才能をそんな風に言うのはおかしいと思うから、自分にもっと自身持ちなよっ」


「うん、ありがとう」


「あのさ……、渡瀬さん」


「何?」


「俺実は……、渡瀬さんの事好きなんだ……」


私は聞く耳を疑った。


「えっ?」


「良かったら、付き合ってほしいっ!」


これが彼、玲音くんの告白だった。


それから私達は付き合い始めた。
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