タテマエなんて、イラナイ――。


「渡瀬さん、今日は映画でも見に行かない?」


「うん、分かった」


「じゃあ5時に何時もの所で待ってるから」


そういい、玲音くんは何処かへ行ってしまった。


「ラブラブだね〜、瑠奈っ」


「もう、茶化さないでよっ」


「ホント照れ屋なんだから」


そんな会話をしていると授業の鐘がなり、私達は席へと着いた。


――そして放課後。


何時も待ち合わせに利用している駅に居ると、玲音くんがやってくるのが見えた。


「ごめん、遅くなって」


「いいよ、私が早く来すぎただけだから」


「じゃあ行こっか」


私達は手を握って映画館へと向かった。


最初こそ恥ずかしかったが、最近はもう随分なれた。




映画館に着き、今話題の恋愛映画を見た私達は、公園のベンチに座っていた。


「結構面白かったね」


「うんっ」


私は玲音くんが言った事に賛同する。


それから暫く沈黙が続き、玲音くんが沈黙を破った。


「あのさ、キスしてもいい?」


最初は言葉の意味が分からなかった。
でも段々言葉の意味に気付き、顔が赤くなるのを感じた。


私は俯きながら、コクりと頷いた。



これが私のファーストキスだった。


唇が離れて気まずい空気になる。


「ねぇ、渡瀬さん。ずっと一緒にいようね」

そう玲音くんは言った。



……ねぇ、玲音くん?

この言葉、

あなたはもう忘れちゃたの……?

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