天使降臨 (『小説・堕天使無頼』改題)
サキと初めて出逢ったのは


茨城から転勤で東京に来たばかりの

クリスマス・イヴ。


チッと舌打ちして俺は街道沿いを歩いていた。


東京に来たってのに
異常気象でイヴに雪かよ!

仕事も早く切り上げられ

車のキーも職場に置き忘れ慌てて取りに行くも


あとの祭り


早々に施錠されていた。


駅まで20分


茨城より寒い気がした。



「さっむーい!」


カンに障る声に振り向くと


サンタガールのミニスカ衣装のギャルメイクふたりが、バタバタとコンビニの前で騒いでいる。


クリスマスケーキ売りのバイトか。


寒いのはわかるが叫ぶ言葉が違うぞ。



しかし


切れ切れに震える美しい声が混じっている。



「クリスマスケーキ、いかがですかー?」


俺は首だけでなく体ごと、



声の主を確かめようとコンビニの店先を見つめた。



ガタガタ震えながら懸命に仕事をする、細身の美しい澄んだ声の女。



それがサキだった。
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