天使降臨
(『小説・堕天使無頼』改題)
翌日は雨だったが昨日ほど寒くはない。
車を職場に置きっぱなしの俺は、また街道沿いを歩くハメになった。
いつもと違う生活時間。
昨日のコンビニで朝飯を買い、職場で食べる事にした。
熱々だがすぐ冷めるであろう缶コーヒーを二本とパンを買いレジに向かう。
コンビニ内はむっとするほど暑い。
レジには半袖の制服の下に襟から薄いセーターをのぞかせトレーナーを着込んだ
天乃サキがいた。
こんなに早くから?
彼女はマスクをして淡々と朝の客をさばいていた。
「いらっしゃいませ。あ!」
「昨日はどーも」
「あ、ありがとうございました!」
「会計まだだよ」
「い、いえ! 昨日は……」
「天乃さん、風邪ひいた?」
「え?名前?」
「店員証」
「ああ、はい!天乃です!」
風邪は大丈夫です! と咳き込んで彼女はレジを打つ。
「無理すんなよ」
「はい! ありがとうございましたー!」
マスクをしていた彼女は大きな目がひときわ目立っていた。
後ろでキチンとひとつにまとめた髪は艶やかな黒髪のストレート。
何を考えてるんだ?
俺は。
車で通勤しない日は不自由だが面白い女の子に逢えた。
が、道々缶コーヒーで胃を温めながら思った。
あんなに暑い店内で厚着したら汗で余計に悪くなるんじゃないか?
しかも熱だってありそうな赤い目もと。
彼女の額からは汗のしずくもなかったが?
まあいい。
雨なら昨日より客足はいい。
客の殆どは車でご来店だ。
ヒマよりはいい。
俺は天乃ほどの働き者じゃないが。