天使降臨
(『小説・堕天使無頼』改題)
サキの家は北鎌倉よりの緑に囲まれた、小さいが木造の一軒家だった。
既にチラつきはじめた雪に、車から降りたサキはぶるっと震え
「ボロいでしょ?」
と笑った。
しかし雪の中のサキは美しかった。
天使。
ふと浮かんだワードにギクリとする。
そういえば詳しくはないが、宗教画の天使は笑顔のヤツは居ただろうか?
みるみるうちにサキの唇が色を失っていく。いや、革コートの俺も雪の鎌倉は寒い。
「寒そうだ。早く家に入ったほうがいい」
サキは凍えながら言った。
「ここまでありがとうございます。あの、寒いですし……うちに誰も上げたことないんですが。あったかいコーヒーでもいかがですか? クッキーもありますし」
絞り出すような声に俺は思わずコートで雪からサキをかばい、
その家へと招き入れられた。