姫密桜
適当に、緩く束ねた髪が
解けそうになり

私は右手で、その髪を
押さえた。

その拍子に、背中の
タオルが少しずれる。

誰も触れた事の無い

白く、綺麗な背中・・・

槇は、視線を逸らす。

そして、告げる。

「さっきは、湯気で
 何も見えなかった
 安心しろ」

槇の声に
私が振り返ると、腰に
タオルを巻いたまま

浴室を出て行く
槇の後ろ姿が見えた。
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