姫密桜
槇に恋心を抱く人達は
皆、気が気じゃない。

中でも、私が一番

気が気じゃない。

「マキ・・・
 
 あのね、マキ

 ・・・マキ」

耳障りな声・・・

彼女が手作りした
お弁当のおかずを
お箸で口に
運ばれるがままに

断われない、槇は
味見をする。

「おいしい?」

「ああ」

それは、まるで
恋人を通り越して
新婚夫婦のよう・・・

彼女の瞳には
槇しか映っていない。
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