姫密桜
櫂は、フォークを見つめたまま
ぼーっとしていた。

「ほら、カイちゃん
 落ちちゃうよ、早く」

桜に言われるがままに口を
開けてしまった櫂。

ケーキを食べさせてあげる桜。

「おいしい?」

「ああ、おいしい」

「じゃあ、後でカイちゃんの
 チョコレートケーキ
 ちょっとだけちょうだい」

「サクラ、最初から
 それが、狙いだったろ?」

そう言って、にっこりと微笑む
櫂ちゃんの究極の笑顔を
こんなに間近で見たのは
本当に久しぶり。

槇と櫂ちゃんは
とってもよく似ている。

櫂ちゃんの方が少し目元が
切れ長で、涼しげ・・・
< 332 / 675 >

この作品をシェア

pagetop