姫密桜
ただならぬ空気に、槇は
リモコンでテレビを消した。

「サクラ
 二階で、ドラマの続き
 見てきてよ
 
 後で、内容教えて?」

「うん、分かった」

そこに居てはいけないような
気がした私は、その場を離れ
自分の部屋へと向かう途中に
聞こえてくる父の声。

「マキ、お前
 母さんから聞いたが
 なぜ、進路を変えた?
 
 進学せずに働くとは
 どういうことだ?
 
 説明しろ」

えっ?

槇、進学しないの?

私は、部屋へ向かう足を
止めて、槇の声を探す。

「進学する意味が俺には
 見つからない・・・
 
 アニキのようになりたい
 夢も、俺にはない」

槇・・・?
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