姫密桜
「・・・
 でも、それもいいんじゃねぇ
 このご時世、進学しても
 就職にありつけない奴は
 山ほどいる
 
 それにまた学びたくなったら
 その時に動けばいい
 大学は、逃げないさ

 まっ、頑張れよ」

部屋へ戻ろうとする櫂。

「カイ、御飯は?」

「ごめん、母さん
 ダチと食ってきた」

父は言う。

「まあ、カイの言う事も
 一理あるな
 
 お前の人生
 お前の好きなようにしろ

 ただ一つだけ
 この家を出て行くのは
 ちゃんと定職について
 一人で暮らしていける
 目途が立ってからにしろ
 
 それまでは、お前を守るのは
 私達、親の役目・・・
 
 奪うなよな
 お前と過ごせる時間を」

「はい」

槇は、深く頭を下げた。
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