姫密桜
俺を見つめて、真剣な表情で
そう言い放った貴方は
最高にカッコよくて

貴方が恋敵なら、俺はきっと
勝てないだろう・・・

「アニキ・・・」

「マキ
 お前の選択は間違ってない

 サクラを早く、しっかりと
 摑まえてやってくれよ

 アイツは、この十年間
 お前への想いを閉じ込めて
 辛い想いをしてた」

櫂は、知っていた・・・

この二階の窓から
春になる度、あの趣のある花

庭に咲く、桜が見える。

その満開な庭桜の下、彼女は
今年も、花を見上げ
何かを告げ、顔を覆う。

届かぬ、兄への想い。

可愛そうで見ていられない。

窓に背を向けて、櫂は
深い息をついた。
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