姫密桜
中年男性は、先生の問いかけに
答えることなく、私を真っ直ぐ
に見つめる。

その視線は、怖いほどに痛い

折口さんのお父さん・・・

彼は、何か知っているの?

私と折口さんが仲違いしてる
事に気づいているの?

「オリグチさん?」

「ああ、はい
 宜しく、頼みます」

「クスミ、頼むよ」

「はい」

私は、彼女の鞄に触れる。

机の引き出しから、彼女の私物
を取り出して、鞄にしまう。

私は、彼女の物に触れたくない

彼女だって、この私に触れられ
たくないだろう。

私を見つめる、彼女の父親の
視線に戸惑いながらも、私は
テキパキと折口さんの帰る
準備を整え終わらせた。
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