姫密桜
「先生、できました」

「ああ、ありがとう」

鞄は、先生の手から親御さん
に渡される。

「ありがとう」

折口さんのお父さんは、娘に
するように、私の頭を撫でて
この私に優しく微笑みかけて
くれた。

大きな手・・・

「クスミ
 戸締り頼んでいいか?」

「はい」

「では、オリグチさん
 保健室に行きましょう」

教室を出て行く先生と
彼女の父親。

廊下を走ってくる足音。

「サトウ
 お前もまだ居たのか
 早く帰れよ」

「はい、先生、さようなら」

聞こえる和歌子の声、教室に
彼女は姿を現す。
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