姫密桜
振り返った

槇の足が止まる。

槇の瞳に、私と彼が映る

「どうした、マキ?」

「いや、行こう」

ほんの少し、汚れた床。

「内緒にしててやるよ
 その代わり
 ひとつ聞いていい?」

そう言って
屈んだ姿勢で床の汚れを
素手で拭き取る彼

彼の髪が
窓から差し込む
朝の光を受けて

金色に輝く。
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