姫密桜
『私、エイジの子供を
 妊娠したの』

その言葉に、母の顔が歪む

その事実を知った時の母の
苦しみが私に伝わってくる。

「私が目を伏せたエイジの罪
 ううん、罪などではない
 
 ミスズとの確かな愛が
 形として現れた事実に
 私はもう、適わないと
 身を引いた・・・

 ううん、それも違うわね
 
 今思うと、私は結局
 ただ彼の事を
 赦せなかっただけ・・・
 
 たった一度でも彼女を選んだ
 彼を赦す事ができなかった」

「ママ・・・」

「ごめんね、サクラ・・・
 
 私の、この想いが貴女から
 父親を奪ってしまった

 お腹の中に貴女が居る事を
 ママは、知っていたくせに
 彼の手を放したの

 彼に何も告げなかった・・」
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