姫密桜
梓の瞳から零れ落ちる涙・・・

「・・・放してよ」

那智は、その腕に梓を
抱きしめながら優しく言う。

「もう、やめろよ

 お前だって気づいてる
 二人の愛が本物だと
 いうこと・・・
 
 誰も太刀打ちできない
 
 俺や、お前など
 出る幕じゃねえよ
 
 オリグチ・・・
 これ以上、自分を
 傷つけるのは、やめろ」

那智の腕の中、梓の
頼りない声。

「傷、ついてもいいよ
 マキが手に入るなら
 ・・・
 マキが欲しいよ」

那智の胸で、梓は声を
あげて泣いた。
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