姫密桜
槇は、彼女に微笑みかけた。
彼女は、ほっと息を漏らす。

「マキ、おはよう」

マキ・・・

ズキッ、胸が痛い。

もう槇の事を、そう呼ぶ事
のできない、私。

そう、呼べる貴女が羨ましい

この胸は、いつまで痛む?

「サクラ
 ボーっとしてないで
 靴、履き替えろよ」

槇の声に、足元を見つめる私

私は、いつかの様に靴を
履いたまま床の上に立つ。

「あっ」

「ほらっ、どけよ」

槇は、ポケットから取り出した
ハンカチで汚れた床を拭こう
としてくれた。
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