姫密桜
「すまない」

「ごめんなさい」

「別にいいけど、じゃあ」

通り過ぎる梓の肩を叩く
那智の手の力。

「何?痛いよ」

「ありがとう」

「何が、やめてよ」

梓は涙を拭って階段を
降りて行く。

空を見上げる、桜の元へ
歩み寄ろうとした和歌子に
那智は言う。

「ワカコ
 今は、サクラを
 一人にしててやろう」

「うん、そうだね」

「教室で待ってよう」

「うん」

差し出される、那智の手。
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