姫密桜
ドキドキと、胸が高鳴り苦しい

ぼそっと、話しだす槇の声。

「サクラ
 早く帰って来いよ

 約束どおり、晩飯奢るから
 今夜、食いに行こう?
 ・・・みんなで」

「本当、もうバイト代
 入ったんだね」

「ああ」

「やったぁ

 すぐに帰ってくるから
 絶対、待っててね」

「ああ」

「サクラ、電話・・・」

私の携帯電話を持って
現れる母。

私達は繋いだままの手を
ぱっと、放した。

槇がどんな想いで私の手に
触れたのか・・・

槇の決意を、私は知らない。
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