姫密桜
一人で黙々とお箸を
進めていく彼女を
私は見つめた。

「サクラ
 呼んでやれば」

「えっ、でも
 話したことない」

私も和歌子も、一度も
話した事の無い彼女に

『お弁当を一緒に
 食べよう』

と言える勇気は無い。

戸惑う私達を他所に
槇は食べかけの弁当箱を
西さんに差し出す。

「リュウ、これ持ってて
 絶対、食べんなよ」

「ああ」

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