少女が見つけたモノ
「奈央!次生物室に変更になったってよ!」

噂をすればなんとやら、廊下の少し離れた所から貴彦が歩み寄りながら声をかけてきた。

「あ、貴彦。」
「って彩香も居んの!?」

貴彦は彩香を見ると少し驚いていた。

「…居ちゃ悪い?」

彩香が皮肉を垂れると

「お前が学校来てるの久々に見たからついな。」

と言って貴彦は嘘っぽく困った顔をした。

「一週間ぶり?あー、でも今日はもう帰る。」
「は?もう帰んの?」
「うん。担任に会いたくない。」

そう言って踵を返して玄関方向へ体を向ける。

「てか、バイトの方はどうすんの?」
「んー…どうしよ。」

ボーっとしながら考える彩香を見兼ねたように奈央が促す。

「また次の所見付けないと無理でしょ。」
「そうだけどさ。」

曖昧な返事をする彩香に奈央は怪訝そうな顔をした。

「…なんか彩香大丈夫?」
「は?…なにが?」
「何に対してもスゴいやる気ないよね。前にも増して。」
「あー…そう…かもね。」

あははっ、と軽く笑って流そうとする彩香に、ため息をついて奈央は少し強めに言った。

「…あのさ彩香は今自分が何したいとかないの?」

真剣な奈央の表情に押され

「………別に。」

と少し言葉が詰まりながら答える。

「今のままじゃ、ホントに全部が中途半端じゃん。そんなんでいいわけ?」
「…別にいいし。」
「よくない。」

ピシャっと言い放つ奈央に返えす言葉が浮かばなくなった。

「…貴彦悪い。バイトの事また今度考える。じゃ。」

手をヒラヒラさせて逃げるように二人の元を去る。


「明日はちゃんと来いよー!!」

貴彦の声が彩香目掛けて廊下に響いた。


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