迷える仔羊
「…そういえば、今日園芸部の花壇でひと騒ぎあったの、知ってる?」
「え…知らないけど…?」
ペンがふわっと動いて、ペン立てに収まった。
「バラの鉢が倒れて、2年の女子が2人、トゲで怪我したんだって」
「うへー、痛そう…」
あたしは顔をしかめた。
「それがね…」
奈緒がちょっと考えて言う。
「強風が吹いたワケでも、物がぶつかって倒れたワケでもないんだって」
「え?」
…どういうこと??
「倒れるところを見た人が、まるでその2人めがけて倒れたみたいだった、って。」
「ま…マジ??」
なんか怖くないか、それ…?
人為的?もしくは幽霊とか…??
「ま、ただの事故かもしれないし?」
ばふん、と奈緒はベッドにダイブした。
「それより葉月は別の心配しなきゃいけないでしょ。」
「ん?何の?」
「あの東雲翔の彼女になったら、そりゃあ女子の逆恨みが…ねぇ?」
さ か う ら み
サ――――
ち…血の気の引いていく音が聞こえるぞ…。
そうだった…!そんなにモテるんだから、当然“女除け”のあたしに反動が返ってくる…!!
「お…女の恨みだけは本当に勘弁してほしいんだけど…」
「ネチネチしてるし、陰湿だもんねぇ~」
人事のように奈緒はしらっとして言う。
うう…
始まって間もない高校生活、穏便に過ごしたいんだけど…!
「な…奈緒ちゃーん…」
「知らないわよ、面倒に巻き込まれるのは御免だし」
頼みの綱が、バサッと斬られた。
……くそーー!!!(泣)