迷える仔羊
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ヒソヒソヒソ
「ねぇ、あの子…」
ヒソヒソヒソ
「今朝見た?…」
ヒソヒソヒソ
あーーーー
「一緒に登校して…」
うーーーー
ヒソヒソヒソ
「彼女?」
視線が痛い!!
そしてうるさい!!鬱陶しいー!!
クラスにまだ友達がおらず、1人でお弁当を食べていたあたしは、不特定多数のヒソヒソ声に我慢が出来なくなって音を立てて席を立った。
教室の隅や廊下でコソコソあたしの方を見ながら喋っていた子たちが、シンと静まり返った。
それを無視して、広げていたお弁当を包みなおし、ドシドシと教室を横切って、校舎のはずれの相談室へと向かう。
ガチャガチャと荒々しく鍵をあけ、勢い良くドアを閉め、はー、と壁に手をついた。
「まじで死ぬ…」
凝った肩をぐりぐり回してほぐす。
あの悪魔めー!!
これだから嫌だったんだよー!!
あたしは心の中で思いっきり叫んだ。