迷える仔羊


今朝、学校へ行こうと玄関を開けると、門の前にあの東雲翔が立っていたのだ。


「…ちょっとあんた、何してるの?」


「何って、彼女のお迎え?」


「はあ?そんなのいらな…」

「周りのヤツらに、彼女がいるって認識させないと意味ないんだけど?」


…あたしの話を聞く気がないのはそのままで、なんか昨日と態度が違う気がするんですけど…。

丁寧口調が消えた!なんかエラそう!!ものすごく!!


「だからって、一緒に行かなくたって…」

「はー。昨日の頭突きかなり痛かったなぁ…。まだ痛いかも…。」


・・・。

う~~~

まだその話を持ち出すのか…

だから頭突きは昨日ちゃんと謝ったでしょうがー!!


ぶっすー、とあたしは口を尖らせて睨む。

すると東雲は門に腕とあごをのせて、にっこりと笑いかけてきた。


「俺の彼女、でしょ?」


はあー!??


「彼女じゃない、彼女じゃ!!彼女のフリでしょ!!」


「あいたたた……頭が…」


イラッ。


「~~~っあーもう!!わかりましたよ!!行けばいいんでしょ、行けば!!」


もーヤケクソだぁ!!


「そうこなくっちゃ」


東雲が頭からパッと手を離して顔を上げる。


はあぁ…。


あたしはこめかみを抑えた。

たいていの女子には、黄色い声をあげちゃうほどの悩殺スマイル。

あたしには黒いオーラを背負った悪魔の笑みにしか見えなかったぞーー!!






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