迷える仔羊
確かにお父さんはどうも女子生徒にモテるみたいだし、あたしが娘だとわかったら、嫌われるのを恐れて睨むのはやめてくれるかもしれない。
「でも、逆に寄ってくるかもしれないし、そうなってもなぁ…」
「そんな下心で付き合ってくるような友達、いらない。でしょ?」
心の内を代弁されて、う、と言葉につまる。
なにコイツ、あたしの心読んだ?
そう思いながら、ミニトマトを飲み込んで、ふー、とソファーにもたれかかる。
ま、別にこの部屋があれば1人で居るのも、お弁当を食べるのも平気だし。
隣のクラスに奈緒もいるから、無理やり友達なんか作らなくてもいいけどね。
ふりかけごはんに手をつけていると、じゃあさー、と東雲が口を開いた。
「俺、彼氏兼友達になってあげるよ」
菓子パンの袋をクシャリと丸めながら、そんなことを言う。
なんで上から目線?
ていうか彼氏じゃなくて偽彼氏でしょうが?
そんな目でみると、視線に気づいてこちらを見た。
どう?ってそんな目で見返してくる。
いやー、まぁ悪い人ではないみたいだし…
お父さんのせいで彼の偽彼女にされてしまったけど、一応は“迷える仔羊ちゃん”だし?
彼氏兼友達って、なんか意味わかんないんだけどなぁ。
…ま、いーか。
そう考えてあたしは、じゃあどーも、と言って軽く会釈をした。
「そうそう、今日の放課後空いてる?」
「は?」
突然問われてあたしは?マークを浮かべる。