迷える仔羊
明日が締め切りの課題もないし、図書館で借りた本でも読もうかと思ってたくらいだけど…
「なんで?」
「ん?葉月ちゃんに働いてもらおうかと。」
はぁ??
「実は4人に呼び出されてるんだよねー。」
…あぁ、そういうことか。
つまりあたしに、一緒に来て追い払え、恨まれに来い、と?
あたしの嫌そうな顔を見て、ニヤリと笑うイケメン男子。
コイツが面白がっている気がするのは、あたしの気のせいか?
「えー…」
「行くよね?」
よそを向いたあたしに、東雲がキレイな顔をぐっと寄せてくる。
ち、近いって。
「ちょっと、退いてってば」
「葉ー月ちゃーん?」
逃げようとしたけど、しっかり肩に手が回ってきてホールドされる。
う~~~~
「…はいはい、わかったよ…。」
行きますよ。行きますとも!行けば良いんだろ!?
ココを任せたクソ親父もそれをお望みでしょうからねぇ。
「やっさしーい!」
はぁー、と大きなため息をついたあたしに、東雲はキュッと口角を上げて言う。
そしてソファーから立ち上がり、そのまま相談室を出て行った。
「じゃあ終礼終わったらここにいてね、葉月ちゃん。」
言い残していった言葉が、ずっしりと肩にのしかかる。
あたしはたぶん複雑な顔をしながら、お弁当を片付け始めた。
彼氏兼友達、じゃなくて、普通に友達でいいんだけど。
っていうかむしろアイツと関わらなければ、普通に友達できたって…
東雲との会話やついさっき入った放課後の予定のことを考えて、苦虫を噛んだような顔になったあたしだった。