迷える仔羊
③
それからなんとか午後の授業を乗り切って、放課後。
仕方なく相談室へ向かうと、部屋の前に東雲が立っていた。
あたしに気づいてニッコリ微笑む。
…だからその胡散臭い笑顔、あたしには効かないんだけど。
呆れた目を向けて、あたしは歩み寄る。
「どーも、お待たせしたようで。」
「いや、こっちがヘルプ頼んだわけだしね。」
じゃあ行こっか、と東雲は歩き始めた。
「で、あたしは何をすれば良いわけ?」
どこに向かっているのかわからないまま、東雲の後に続きながらあたしは尋ねた。
「特に無いよ。ただ彼女らしい顔して、俺の隣にいてくれればいいだけ。」
…彼女らしい顔って、どんな顔だ。
「あとは適当に俺の話に合わせて?」
適当に、ねぇ。変なこと言わなきゃいいけど。
内心ツッコミを入れつつも、あたしはふんふん、と頷いた。
なんだ、それだけか。
なんとかこなせそうな仕事に、少しほっとする。
俺をかけて2人で勝負しろとか言われたらどうしようかと思ったし。
渡り廊下を抜けて階段を下り、1人目の待つ1年6組の教室の前に着いた。
東雲と目を合わせる。
よしっ、来い!!
ガラッとドアを開けて中に入る東雲に続いて、あたしも教室に入る。
「あっ、東雲く…」
教室で待っていたらしい相手の女の子が、東雲の姿を見て声をかける。
が、後に続いて入ってきたあたしを見て、はっと息を呑んだ。
「話って何かな、香川さん。」