迷える仔羊
彼女がいなくなったのを確かめてあたしは、ふー、と肩の力を抜いた。
なんだこれ!!立ってただけなのにものすごく疲れる!!
あたしは近くにあった椅子に座り込んだ。
それとペアの机に、東雲も座る。
「大丈夫?」
「…微妙」
あたしはボソッと答えた。
ふっと東雲が苦笑した。
「彼女って、知り合いだったの?」
「いや、今回同じクラスになっただけで、喋ったこともほとんどないし、中学すら知らないよ」
「そうなんだ…」
そんな人が、どうしてこんなに早く告白を決めたのだろう。
出会ってまだ数日しか経っていないというのに。
かといって、ふざけて来たとか罰ゲームとか、そういう感じは全く無かった。
普通に、東雲を想う女の子の顔だった。
これじゃ、東雲もやりにくいわなぁ…
あたしはちょっとだけ東雲に同情した。
…告白されるのわかっててトボケたふりしたのは、いけ好かないけど。
ボーっとそんなことを考えていると、グイッと腕を引かれた。