迷える仔羊
「まだあと3人いるから、よろしく。」
そう言われてあたしはげんなり顔をした。
仕方なく立ったあたしを東雲はそのまま引っ張って行く。
そして2年2組の教室まで連れてきた。
「げっ、次先輩なの?」
「みたいだねー」
眉をひそめたあたしを一瞥して、東雲は躊躇うことなく教室に入る。
仕方なくついて入ると、先輩はまだいなかった。
呼び出しといていないってどういうことだよ…
あたしは腕を組んで後ろの黒板にもたれかかる。
すると、廊下から数人の女子の声が聞こえてきた。
「…葉月ちゃん、こっちおいで。」
東雲が静かな声で言った。
それに従って、教室の中央にいる東雲のそばに行く。
きゅっと、手を握られた。
「ちょっ!?なに!!」
あたしはすぐに手を振りほどこうとした。
「しー。いいから俺に合わせて?」
???
東雲はドアの方を見ながら口元に人差し指を立てる。
何だかよくわからないまま、あたしは手を振り払うのをやめて大人しくなった。
ガラガラと音を立てて扉が開く。
金髪で化粧が濃く、スカートを極限まで短くした人たちが、ゾロゾロと4人ほど入ってきた。
それと同時に、ムンとキツイ香水の香りが漂ってくる。
「お待たせ、東雲くん。」
1番前にいたエクステの人がこちらへ近づいてきて、思いっきり甘ったるい声で言い東雲を見上げた。
おえ。すっごい声。
どっから出てるんだ。