迷える仔羊
「話って何ですか?先輩?」
顔色一つ変えずに問い掛ける東雲に、先輩は頬を染めて上目遣いで見つめる。
「東雲くん、そのコ…何なの?まさか本当に、彼女だとか言わないよね??」
まさかね~、と顔を見合わせて先輩たちが笑う。
見た目も下品、甲高い笑い声も下品。
あたしは彼女たちを品定めした。
「すみません、先輩方。そのまさかです。」
凛と響いた東雲の言葉で、4人の表情がピシッと固まった。
ゆっくりと彼女たちはこちらを向く。
「ど…どうして??」
ルーズソックスの先輩が唇を震わせて言った。
それに続いて他の2人も口々に言う。
「あたしたちだって東雲くんのこと好きなんだから!!」
「東雲くんはみんなのモノよ!だからあたしたちだって引き下がってたのに…!!」
…ちょいと。なんだいその意味のわからん発言は。
先ほどまでのブリッコはどこへやら、4人はギャンギャンわめき始めた。
ぷちーん
「…あのですね~、ちょっとあな……痛!!」
勝手な彼女らに我慢が出来ず、言い返してやろうとしたあたしを、東雲が引っ張って押しとどめた。
予想以上に広い背中に前方を遮られて、あたしはキッと睨んだ。
それに気づいたのか、東雲は振り向いてバチッと目配せしてきた。
仕方なくあたしは口を尖らせて押し黙る。
東雲は1歩前に出た。
「先輩方のお気持ちはありがたくいただきます。」
例の貴公子スマイルで、先輩たちの顔が染まる。
「じゃあ…っ」
「でも――」
エクステの先輩が口を開いたが、東雲はそれを遮った。