迷える仔羊


「話って何ですか?先輩?」


顔色一つ変えずに問い掛ける東雲に、先輩は頬を染めて上目遣いで見つめる。


「東雲くん、そのコ…何なの?まさか本当に、彼女だとか言わないよね??」


まさかね~、と顔を見合わせて先輩たちが笑う。

見た目も下品、甲高い笑い声も下品。

あたしは彼女たちを品定めした。


「すみません、先輩方。そのまさかです。」


凛と響いた東雲の言葉で、4人の表情がピシッと固まった。

ゆっくりと彼女たちはこちらを向く。


「ど…どうして??」


ルーズソックスの先輩が唇を震わせて言った。

それに続いて他の2人も口々に言う。


「あたしたちだって東雲くんのこと好きなんだから!!」


「東雲くんはみんなのモノよ!だからあたしたちだって引き下がってたのに…!!」


…ちょいと。なんだいその意味のわからん発言は。


先ほどまでのブリッコはどこへやら、4人はギャンギャンわめき始めた。


ぷちーん


「…あのですね~、ちょっとあな……痛!!」


勝手な彼女らに我慢が出来ず、言い返してやろうとしたあたしを、東雲が引っ張って押しとどめた。

予想以上に広い背中に前方を遮られて、あたしはキッと睨んだ。

それに気づいたのか、東雲は振り向いてバチッと目配せしてきた。

仕方なくあたしは口を尖らせて押し黙る。

東雲は1歩前に出た。


「先輩方のお気持ちはありがたくいただきます。」


例の貴公子スマイルで、先輩たちの顔が染まる。


「じゃあ…っ」

「でも――」


エクステの先輩が口を開いたが、東雲はそれを遮った。


< 24 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop