迷える仔羊
次の相手は同じ学年の子で、こちらもまた化粧の濃い背の高い人だった。
教室に入ったあたしたちを一瞥して、東雲くんが好き、とサラっと告げる。
東雲が断ると、聞いてくれてありがとう、とあっさり帰っていった。
化粧が濃い割に、サッパリした人だ。
さっきの先輩たちとは大違い。
東雲は彼女の去った方を見ながら、ボソッとつぶやいた。
「ああいう子なら助かるんだけどね」
…なんか意味深??
どういうこと?と尋ねようとしたが、その前に東雲はあたしの手を引いて次の場所へと連れ出した。
うーん、なんかこのペース掴まれてる感がすごく気に障るんだけど。。
連れられて着いたのは、園芸部の温室が立ち並ぶ庭。
「いた」
そう言った東雲の視線の先に、ホースを持った背の低い女の子がいた。
「相田さん」
ゆっくりと歩み寄り、東雲は花壇に水をやる彼女に声を掛ける。
「…何でしょう」
彼女はこちらを見ずに問うた。
あれ?呼び出されたんじゃなかったっけ??
どう見ても、黙々と水を撒く彼女はコイツを呼び出したようには見えない。
なんでだ??
あたしは東雲を見たが、こちらに目をくれる様子はない。
「ずいぶんこの学校内に様々な植物を育てていますね」
「ええ。園芸部ですから」
「綺麗に咲いていますね、チューリップ」
「ありがとうございます」
淡々と続いていく2人の会話。
東雲の意図がわからず、あたしは黙って聞いているしかない。